「ある閉ざされた雪の山荘で」東野圭吾著 映画化

書評

 

 

東野圭吾著「ある閉ざされた雪の山荘で」が映画化されました。

公開は2024年1月12日(金)。

 

と、この2行だけ書いたまま、長期間放置してしまいました。

実を言いますと

「読んでから観る(映画)か、観てから読むか」みたいな記事を書くつもりでした。

2023年の10月頃、夫婦で試写会に応募しましたが見事に外れてしまいました。

そしてそんな記事を書くつもりで、1月下旬に映画館に行ったのです。

行ったのは大阪・梅田、TOHOシネマズ梅田。

落着きのない性格の私は、映画館のような場所は苦手。

それでも梅田まで足を運んだのは

珍しく妻が「見たい」と言ったのと、原作が東野圭吾だったのがその理由。

そしてバタバタと平日に出かけた理由は、上映期間が終わりそうだったから。

上映期間が1/25までとなっていたのですが、どうやらもう少し上映されていたようです。

 

 

「ある閉ざされた雪の山荘で」東野圭吾 著

 

 

 

私が読んだのは文庫版で、2021年2月発行の第91刷(第1刷は1996年1月)。

初版は講談社ノベルズとして、1992年3月に発行された長編推理小説。

30年以上経った作品が映画化されたり、話題になる。

そして売れ続けているところは、さすが東野圭吾作品だと言えるでしょう。

しかし作者曰く、この作品を書いた頃はまだまだ売れっ子作家とは言えず

なんとか話題になりたいと思いながら書いたミステリーだったそうです。

近所のショッピングモールにある書店には、映画化されたということもあって

この作品が「平積み」されていました。

巻末をチェックしてみるとなんと今年1月の増刷で、「第107刷」となっていました。

 

 

作品概要

 

 

劇団「水許」の演出家・東郷陣平の新作舞台のオーディションに合格した劇団員男女7人。

彼らはある日、早春のペンション「四季」に集められた。

東郷からの指示は「シナリオを自由に考えながら舞台稽古を行う」こと。

しかも「記録的な豪雪に襲われ、電話も通じない孤立した山荘での殺人劇」という設定。

そして「電話を使用したり外部の人間と接触を持った場合には、

オーディション合格を取り消す」という警告がされていた。

その「舞台稽古」は4日間。

その「山荘」で、仲間が1人、また1人と消えて行く。

これは「稽古」なのか、それとも実際に殺人事件が起きているのか…。

 

 

登場人物

 

 

■久我和幸(重岡大毅)

  合宿メンバーでは唯一「水滸」以外からオーディションを受けて合格した。
  「堕天塾」の元劇団員。元村由梨江との接近を目論む。演技には自信を持っている。
      

■笠原温子(堀田真由)

  「水滸」劇団の女性のリーダー格。演出家の東郷と肉体関係をもったと噂される。    
  だが最初の「殺人被害者」となる。退団した麻倉雅美を説得に行った3人のうちの1人。

■元村由梨江(西野七瀬)

  二人目の「殺人被害者」。退団した麻倉雅美を説得に行った3人のうちの1人。
  容姿には華があるが、演技の実力はイマイチで本人も自覚している。
  父が劇団「水滸」への出資者で、オーディション合格もそのおかげだと噂される。
  

■雨宮恭介(戸塚純貴)

  三人目の「殺人被害者」。退団した麻倉雅美を説得に行った3人のうちの1人。
  「水滸」男性劇団員のリーダー格。公にはしていないが、元村由梨江の恋人。

■田所義雄(岡山天音)

  感情的で軽薄な性格。由梨江に好意を抱いており、合宿中にもアタックしている。

■本多雄一(間宮祥太朗)

  粗野な言動をするが、性格は温厚。実力派のメンバーであるが、人を惹きつける華がない。

■中西貴子(中条あやみ)

  色気と才能を持ち合わせた個性的な女優。和幸に気があり、男性経験も豊富なもよう。
  豊かな胸の持ち主だが。。。

 

■東郷陣平

  劇団「水許」の看板演出家だが、落ち目との噂もある。
  独裁的で、劇団内では絶対的な存在。
  笠原温子とは恋人関係にあるという噂がある。
  オーディションで合格したメンバー7名を山荘に集めて、
  自らは姿を表すことなく速達を送って指示して、奇妙な舞台稽古をさせた。

■麻倉雅美(森川葵)

  劇団「水許」の元メンバー。才能はあるが、容姿がイマイチで華がない。
  雨宮に好意を抱いていたらしい。
  オーディションに落選したショックから劇団を辞める決意。
  実家がある飛騨高山に帰郷。そこでスキー事故で崖から落ちて半身不随になった。
  事故と言うか、自殺未遂。

 

登場人物名の横のカッコ内は、映画での配役。

映画では設定が少し違っていました。

 

 

読者の予想を上回る奇想天外な展開(ここからネタバレ)

 

 

最初の「殺人被害者」は笠原温子。

遊戯室で一人、電子ピアノを弾いていた温子。ヘッドフォンをしていたので、

背後から近づく「侵入者」に気づかないまま、絞殺される。

「殺人現場」とされる部屋には死体はなく、殺人の状況が記されたメモが残されていた。

そして第二、第三の「殺人」が発生するが、犯人は内部の者か外部からの侵入者か。

劇団員たちは芝居の稽古だと思いながら、実は本当に殺人事件が起きているのではないか。

次第に参加している劇団員たちは、お互いを疑い疑心暗鬼に陥っていく。

同時に読者も不可思議な舞台設定と「謎の展開」に頭を悩ませる。

実はこの物語は3重構造になっている。

1.劇団員の視点・・・・・・芝居の稽古だと思っている
2.犯人の協力者の視点・・・真犯人と参加者の両方を騙している
3.真犯人の視点・・・・・・計画通りに「殺人」が行われていると思っている

 

そして第4の視点、読者は「真犯人」も「その協力者」の存在も知らぬまま

物語に引き込まれていくのです。

主人公が真実を解明する道具として、マッチ棒が使われていました。

もう少しスマートな方法はなかったのかと思いましたが、

あまりにも展開が意外過ぎて、細部を気にする余裕がありませんでした。

この「3重構造」と「事件の解明」については、

映画の方がわかりやすいと思いました。

映画では主人公が持参した、ビデオカメラがトリック解明の鍵になっています。

 

 

 
 

映画「ある閉ざされた雪の山荘で」鑑賞

 

 

 

この記事を書き始めた当初は映画の封切り前でしたが、書きかけのまま放置。

なんとか封切り前に書き終えようと思っていましたが、多忙のため断念。

封切り前どころか、上映が終わってしまいそうになったため

1月24日に、妻といっしょにTOHOシネマズ梅田本館にて観てまいりました。

ネットで調べてみたところ、上映日が1月25日までしか記載されておらず

上映期間が終了すると思い、慌ててかけつけた次第です。

映画での登場人物は、原作とは少しイメージが違いました。

設定自体が大きく異なっていた感もあります。

原作との違いを、私なりの感想で明記してみます。

その前に、登場人物の原作と映画との違いをご紹介しておきます。

映画をDVDなどで観ようと思っている方は、

ここから先はネタバレ的な内容も書きますのでご承知おきください。

この映画は現在(2024/8)「Amazon prime」で観ることが出来ます。

DVDのレンタルも、先日始まったようです。

 

 

■映画での登場人物と配役

 

 

■久我和幸(重岡大毅)

主人公。劇団「水滸」以外からのオーディション合格者。

映画では「水滸」の大ファンという設定。

重岡大毅はジャニーズの男性アイドルグループのメンバーですが、

主役としては少し印象が薄かったと感じました。

 

■笠原温子(堀田真由)

「水滸」の女性のリーダー格で、演出家・東郷との関係が噂される点は原作と同じ。

映画ではかなり性格の悪い女という設定でした。

そもそも「水滸」のメンバー同士は、バチバチ感がすごく

全員がライバルで競い合っているという設定になっていました。

堀田真由はこの映画のあとに放送されて好評だったドラマ、

「アンチヒーロー」にも出演していました。

このドラマでの堀田真由の方が彼女的には、ハマっていたと思いました。

 

■雨宮恭介(戸塚純貴)

「水滸」男性劇団員のリーダー格。しかし映画ではまったく目立たない存在に。

封切り前のインタビューなどでは、この作品で飛躍を図ると言っていましたが…。

NHK連続テレビ小説「虎に翼」での轟 太一役の方が存在感があります。

 

■田所義雄(岡山天音)

設定は原作通りでしたが、「悪役」を強調し過ぎた感がありました。

服装や髪形も「キモイ」し、言動もやり過ぎ感がありました。

私的にはこの俳優さんは、清野菜名主演のドラマ「日曜の夜くらいは」の

好青年・市川みねやキングダムでの尾平役のイメージが強く、違和感を感じてしまいました。

 

■本多雄一(間宮祥太朗)

原作のイメージと違い、完全に主役級のオーラを感じました。

そういう演出ではなく、間宮祥太朗の存在感が他を圧倒していました。

この映画で最も印象に残った俳優さんでした。

この存在感は、良くも悪くもこの作品に大きな影響を与えた感があります。

 

 

原作と映画との違いについて

 

 

原作と映画の違いの第一は、時代背景。

原作ではスマホどころか、携帯もインターネットもない時代。

映画では当然のことながら、展開が現代風にアレンジされていました。

舞台監督からの「指令」や「殺人事件後」のメモは

部屋の壁に映し出される映像&アナウンスになっていました。

「誰がいつ映写機を設置して作動させたのか?」

思わずツッコミたくなりますが、そこは物語の流れ上「よし」としましょう。

そして映画ではただの「舞台稽古」ではなく、主役を決めるテストという設定。

劇団員間の「バチバチ感」が、さらに激化する結果となりました。

そのせいか、出演者たちの演技に「遊び」や余裕が感じられませんでした。

例えば笠原温子が殺された(?)ことが発覚する直前。

久我と雨宮が中庭でラジオ体操をする場面。

それを見ていた本多が「記録的大雪はどうした?」と、舞台設定のツッコミ。

同時に雪山での遭難を演じる二人。

「久我ぁーーー。寝るなぁ!寝たら死ぬぞ!」

そして本多も「今、救けに行くからなー」と参加するが、全く笑えなかった(笑)

その光景を見た田所と中西の反応もクール過ぎて、不愉快な感じすら覚えました。

また、アリバイ作りのために久我と本多が同じ部屋で寝る場面でも。

単独行動を制限するために、二人は赤い紐で腕をつなぐ。

翌朝その赤い紐が二人の間で「ハート型」になっていたというシーン。

本来なら爆笑を誘うシーンのはずだが、流れの「バチバチ感」のせいか

館内からは全く笑い声が聞こえてきませんでした。

私自身も「ここ、笑うとこだよなぁ?」と、戸惑いながら唇の半分だけで笑。

 

ちょっと疑問に思ったのは、「真犯人」の監視方法。

原作ではマジックミラーとのぞき穴でしたが、映画では現代らしく監視カメラが使われてました。

しかしそれだと、久我と本多がアリバイ作りのために同じ部屋で寝たことや

最後に久我、中西、田所が一緒にいたことも「真犯人」にバレバレだったのでは?

ツッコミ所は多々あったものの、そこは限られた時間で事件を解決させるわけですから

細かいことは気にするべきではないのでしょうね。

うまくまとめられていて、原作よりもストーリーは分かりやすかったと思います。

 

 
 
 
 
 
 
 

 

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